【長い終わりが始まる/山崎ナオコーラ】大学4年生の女の子の半径5メートル以内の小さい小説。ぐるぐると終わらない寂しさを感じる。


『長い終わりが始まる』 山崎ナオコーラ

読みました。ナオコーラさんの作品を読むのは『人のセックスを笑うな』『ニキの屈辱』に続く3作目。

以下、感想のような、ポエムのようなものを、つらつらと書きました。

ネタバレはしていないですが、気になる方はお気をつけください。

物事はいつか終わる。

地球は太陽の熱に溶かされるかもしれない。

人類は滅亡するかもしれない。


人生もいつか終わる。

どうやら恋愛もいつか終わるようだ。

大学4年間というモラトリアムもいつかは終わりがくる。

どれだけ練習を重ねたって演奏も終わる。

そして、セックスにだって終わりも始まりもある。

では、いったいいつ終わるんだろう。

誰が終わりを決めるんだろう。

大学を卒業したらモラトリアムは終わり。

指揮者が指揮棒をおろしたら演奏は終わり。

男性が射精したらセックスは終わり。

本当にそうなの??

ということをウロウロ漠然と思いながら読みました。

もちろんいつかいろんなものが終わっていくけど

でもそれを終わらせるのは自分なのか、それとも強制的に幕は閉じる??

主人公は大学4年生の女の子、小笠原。

こういう子、いる!と思える反面、いやいやこんな子いないでしょ笑、とも思える。

就活しないといけないとわかりつつも、小さな大学の小さなマンドリンサークルの練習に夢中になる。

でもそのサークルでは自分の実力が認められず孤立しがち。

(正確には、実力は認められているけど人間力が認められていない)

恋愛したり、サークル内で地位がある同級生や下級生に嫉妬したり。

小笠原の半径5メートルくらいの中で繰り広げられる小さな小説。

すっごい小さい。

も~~そんなことしてないで就活しなよ!っておばさんは思っちゃう。

うじうじしてないで片思い中の男の子との関係もきっぱりしちゃいなよ!と思っちゃう。

でもなんだか少しだけ小笠原の肩をそっと抱きたくなる瞬間もある。

なんだろうな、

13歳くらいの私なら、小笠原みたいに自分の好きなこと、嫌いなこと、

したいこと、されたくないこと、気に入らないこと、、に対して

今より素直になれていた気がするから。

小さい女の子がセックスだけできるようになっちゃった、みたいな感じもある。

だから頑張れ、そのうち成長できるよ、小笠原もさ、と思う感じ笑

なので個人的にはこの小説からはあんまり学びもないというか、そこまで共感もない。

でも私がやっぱりナオコーラさんの作品が好きなのは、彼女の淡々とした小説の空気感。

長い終わりが始まる』はあらすじだけみるととってもチープな小説になりそうだけど、

ちょっとした言い回しや行間を流れる空気感が次のページをめくりたいと思わせてくれる。

小笠原が「終わらない」と思っている(願っている)演奏のように、読中は永遠と耳の奥で何かが鳴っている感じ。

いつが全てに終わりがくるって頭で分かっているけれど、

今は目の前のことだけ考えて無意味に生きていたい。

そんな小笠原が、特に嫌悪していた就職活動のために自分のサークル活動のことを話す終盤の場面が印象的。

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秋になっても、小笠原は、就職先をみつけられないでいた。とうとう、面接でサークルの話を始めた。

・・・

小笠原は、こんなことを言う自分に吐き気を覚えた。

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この小さな小説の中でも小笠原は少しだけ変わった。

終わりを感じて、セックスをして、失恋して、彼女は就活も始めてみた。

吐き気を感じながら。

たぶん5年後、10年後、小笠原は自分がお金と時間を限りなく費やしたサークル活動をきっと「たいしたことないもの」と位置づけるんだろうな。

彼女はもっともっと変わって、社会に染まっていくんだろうな。

そんな続きのストーリーも胸を痛めながら読んでみたい。

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